October 07, 2005

テーマ本

ヒマってわけでもないんだろうけど、宿題をやる気にもならない一日。今週末は木曜午後から日曜までフリーなのでかなり長い気がする。試験勉強のこととかを考えるとやや焦りもあるけど、まあまだ来て1週間なんだしと思って、のんびりに徹することにした。
ここは夜が早いし真っ暗だし出て行くのも面倒だし、今は一人暮らしでものすごく静かだから(テレビはない家庭なのです)本を読んだり、なにか考え事をしたり、ブログを書いたり笑 するのにはもってこいの環境。

今回、何冊か新しく本を持ってきた。もともとそれほど読書家というほどでもないのだけれど、活字は好きでいつも何か読んでいる。ネットにしても、新聞雑誌にしても、日本語の文章に触れていないとやっぱりなんだか落ち着かないのだ。

treehouse.jpg
童話に出てくるみたいなツリーハウス

ここ数年、やたらと読んでいるのがよしもとばななの著作。「ばななん」というハンドルネームと彼女とは何の関係もないんだけど、今やネットの日記も欠かさず読んでいるほどの中毒者。以前からもちろんその名前は知っていたのだが、大ベストセラー作家だったにもかかわらずほとんど読んだことがなかった。それが2年ほど前から何かの拍子に彼女を知って、一冊読んでみたら、当時の私の心の琴線がガンガンと響きまくり、それから私の生活になくてはならない人となったのだった。

彼女のサイトにある日記を読んでいたら、またいろんなところでリンクしてて、そのうちどっかですれ違うんじゃないかっていう位。ハワイ島に興味を持ち始めた頃、彼女がハワイ島に行ってレポートしていたし、私の世田谷時代の家は彼女の家とかなり近所だったみたいで、彼女の日記に出てくる三茶にあるステキなカフェに何度か通ったりもした。
彼女の著作は、「キッチン」「TSUGUMI」のような古いものよりも、結婚して名前が全部ひらがなになってからの最近の作品のほうが私は好き。

その中でも一番好きだったのが「デッドエンドの思い出」という本で、前回の留学時、この本を大事に抱えてハワイに持っていき、何度も何度も読んだ。短編集なのだけど、その中でも本のタイトルになっている作品が一番私にはぐっと来る感じだった。この本を初めて読んだ頃は今思えば相当しんどい時期だったので、この作品にどれだけか救われた思いがした。悲しみで感受性が研ぎすまされていて、言葉のひとつひとつが心に突き刺さって。

そして去年の夏、ちょうど留学する直前に彼女の新刊が出た。それが、「海のふた」だった。

4860520378海のふた
よしもと ばなな

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初めて読んだとき、なんだか全然ピンとこなくて、正直「駄作じゃないの〜これは」と思った。さらっと読んでしまって感動もなくて、単に彼女の昔を懐かしむノスタルジーみたいなものだけじゃないのかな、なんて思ったりもした。なので、その本は実家に置いたままになっていた。
そして先月実家に帰ったとき、ふとまたこの本を手に取って読んでみた。すると、何故か今回は自分の心にものすごく響いてきたのだ。

この本は、彼女の第2の故郷ともいえる西伊豆の土肥という海のそばの町を舞台にした本で、美大を卒業したばかりで故郷に帰って小さなちいさなかき氷屋を始めた、がさつなまりちゃんと、傷ついた心を癒すためひと夏一緒に過ごすことになった、繊細なはじめちゃん(女)の、ひと夏のお話。
さびれていく町とそれを悲しみながらもその事実を認めて、でもできることから始めようとして、小さな、でも自分が理想とする好きなものしか置かないかき氷屋をはじめたまりちゃん。

夢をかなえることはとても地味な作業の連続っていうこととか、お金に関すること、夏の海が始まるときのわくわくした感じとか、最後に泳いで「海のふた」を閉めて夏を終えたこと。自分の故郷を愛するということ。もう線をガンガン引いて「ここ重要!」っていいたくなるようなフレーズの数々。
それは私がこの夏を海の近くで過ごしたから実感できたのかもしれない。今までの人生の中で一番海のそばにいた今年の夏。だからこの本は今の私にあるべきテーマ本なんだな、と思って、今回はこの本をもってきた。
好きなところを一文だけ引用しようと思ったらありすぎて困った。でも今は秋だから、この部分を引用しようと思う。

時々考える。
秋が深まっていく海は淋しくて、またはじめちゃんがやってくるのを私は待っている。
その淋しさは全然悪い淋しさじゃない。心の底の静かな水を、すうっと清めてくれるようなものだ。そして、その季節があるからこそ、夏の荒々しい力にかき回された全てがまた静かになることができる。あたたかいものやくるんでくれるようなもののよさがぐっとひきたって、自分もまた秋の一部にきれいに混じっていける。

私もハワイ島での勉強が終わったら、また秋谷に戻ってサロンをスタートさせる。自分の理想とするやり方を貫くことがどこまでできるのか、正直不安もあるけれど、この本を読むと、きっと私は間違ってないと強く思った。彼女の書く世界はあまりに美しすぎるとかきれいごと過ぎるとか言う人もいるかもしれないけれど、こんなおとぎ話のような世界、実はきっといろんなところでひっそりとほんとうに存在しているに違いない。

それに、今の私も、よく考えたらあり得ない話の連続だ。どうしても海のそばがよくて、ずっとハワイにいる頃から葉山か秋谷周辺に住みたいと考えていたら急に日本に帰ることになって。最初はもっとお気楽にソンをしないことばかり考えていたらなかなかうまくいかなくて。
でも、「やっぱりどうしてもここだ、こんなにも好きなんだからきっとこの気持ちは変わらない」と思って、リスクを承知で秋谷に住もうと決めたら、それまでなかなか進展しなかった家や仕事のことが、なんだかビックリするくらいするすると決まって、つても何もなかったのになんだかあっという間に近所に友達も出来て、ほんとうに出来過ぎた小説のよう。こんなことってあるんだな、と自分でも驚くほど。

deadend.jpg
デッドエンドと夕陽

そしてまた秋が来てハワイ島にも来られた。心配していたビザの問題もイミグレも全くなんの問題もなくスルーして、授業が始まって、住むところもギリギリになって絶妙なタイミングで最高の条件で住まわせてもらえて。だからこれはきっとハワイ島に歓迎してもらえてるってことなのかな、なんて思う。でもこの島は、ときどきとんでもないところでどんでん返しをくらわすことだってある。それも何かの学びってことなんだろうけど。

これから先も、きっと何度もこの本を読み返すことになるだろう。そして繰り返し読んで、この本から、そして日本やハワイの海からたくさんの力をもらうんだろう。
ばななさんはハワイもかなり好きで、息子さんの名前も「マナ」くんっていうくらい。(ハワイ語でマナとは魂を表す大切な言葉)確か子供もハワイ島でできたと言っていたような‥(笑)ハワイを書くにはテーマが大きすぎて、今は書けないと彼女はどこかで書いていたけれど、フラも習っているみたいだし、いつかハワイを題材にした彼女の著作も読んでみたいな〜なんて思う。

Posted by bananan at October 7, 2005 12:25 AM | トラックバック
コメント

吉本ばななさんはご主人はロルファーだし、オーラソーマにも興味のある人で、私も少なからず(知らないうちに?)影響されているようです。
人の興味の方向性によって、こんな縁もあるんだな〜と思える人の一人ですから、人生って面白いです!!

ばななんさんも頑張ってますね〜!
日本を離れていても、ばななんさんのブログは私の気持ちにも届いてくれるので読むのも楽しみです。
いつも応援してますよ〜♪
私も少しずつ自分なりに踏み出してますので、お互い頑張りましょうねー☆

Posted by: Noriko at October 10, 2005 02:46 PM

>yukaさん

いや〜こちらこそお別れのご挨拶もできなくて
ごめんよぉ。
見送りって、竹芝じゃないんだから〜笑

メールなんで送れなかったんだろうね?
またこちらからメール送りますねん。
島話もまた聞かせてね!
来年1月以降にゼヒゼヒ会いましょう♪

Posted by: ばななん at October 9, 2005 06:50 PM

>tomokoさん

ブログ、ちらりと拝見しました♪
どこにコメントつけようか〜とか思ってなやんじゃいました。
みなぞうくん、私もショックです(涙)
こないだ江ノ島水族館で初めてみて、あまりのでかさとキュートさにショックを受けたばかりなのにぃ。

さて、それはともかく笑、
『葉山界隈スキスキ病』重症 なんですね!
素晴らしいっ!!
ゼヒ来年、遊びにきてください!
いや、マッサージ受けに、か?笑

ブルームーンの大島さんのライブは
私は見てなかったんですけど、すごく評判が
いいみたいですね。来年は見にいきたいな。

>名嘉睦稔さんの版画
私も掲載されてるなかで一番いいと思ったのがこの版画でした。
でも、やっぱり生で見たいな!この小ささでは
たぶん原画の100分の1くらいしか
よさが伝わってないように思う・・・。
どこかで展示されてるのでしょうか?

「海のふた」
劇的なことはなにもない静かなお話ですけど、
読めば読むほど味のあるというか、
きっと時間を置いてまた読むと違って
みえてくるような、そんなお話のように思えました。
再読のいいきっかけになればいいなと
思います。

これからもよろしくです〜(なんだか長文になっちまった。失礼しました)

Posted by: ばななん at October 9, 2005 06:48 PM

ご無沙汰しています。
気付いたらハワイの人になっていて、申し訳ない限りです。島から帰って、新学期、バタバタしていたら、あっという間に10月。残念でなりません。見送りするつもりだったのに。

うまくメールが送れなくて、コメントしました。
勉強、頑張ってくださいね!
帰ってくるときは、是非連絡くださいな。

Posted by: yuka at October 8, 2005 02:46 AM

こんばんは〜♪
残念ながら神奈川県民ではなく
静岡県民な私です。
でも『葉山界隈スキスキ病』重症につき
日本にお帰りの際には必ずや伺いますぜ!

「海のふた」私も持っていますよ。
名嘉睦稔さんの版画が好きで買ったのですが
もう一度読んでみよう。
P156の「海のふたがあいたまま」の原画は
海の向こうに吸い込まれるようで、
心臓鷲づかみでした。

Posted by: Tomoko at October 7, 2005 04:14 AM
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