その帰路につくには、少々仕事をしなくてはならなかった。
流しのタクシーなんてもちろん走っちゃいない。ここからがお仕事なのである。夏休みの屋久島には観光客がいるのだ。
おもむろに一オクターブ高い声を出して、麓に降りようとする観光客に声をかけた。
「あのぉ どちらへお帰りでしょうか?」
ヒッチハイクは簡単であった。拍子抜けするほどあっけなくつかまった。レンタカーで白谷雲水峡まで来ていたお父さんと子供2人の家族連れの車であった。
運良く宮之浦まで乗せていってもらうことができた。入口近くまで降りてきたあと、丁寧にお礼を行って車を降りた。
麓は山とは全く違う表情を見せていた。まだ日差しがまぶしくて、山の中のあの幻想的な雰囲気とは好対照であった。川沿いを歩いて晴耕雨読まで戻った。
まだ2日しかいないのにすっかり我が家状態のその場所で、久しぶりのちゃんとしたお風呂に入り、洗濯をさせてもらう。
そして、大阪からまたやってきていた、フリーアナウンサーのおねーちゃんと、脱サラをして今はアウトドアな喫茶店を開いているという人たちと話が盛り上がった。高校生3人組というのもいた。
奇遇にも私の家の近所で写真の修行をしていたとなりの民宿のにーちゃんからは、彼がつくったというヤクスギの切れ端をつかった小さなイルカの置物を買った。ヤクスギの流木をつかった置物やアクセサリーはとても高いらしい。市価の半額以下で買ったのではないだろうか。近くのローソンの話しで盛り上がった甲斐があるというもんである。
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